● MOSA MPJ digital(2000/11/14)

  〜 Mac OS Xパブリックβ版を使う 〜

  このコラムは、MOSAの会員にのみ配布されているプログラマ向け
  デジタルマガジン MPJ digitalの2000年10月号に執筆したものです。


前回は、Macintoshのコントロールの仕組みが、Mac OSの進化と共にどのように変化して現在に至ったかを解説してみました。今回は、コントロールの話しはちょっとお休みして、ADC(Apple Developer Connection)メンバー(Selectメンバー以上)に配布された「Mac OS Xパブリックβ」の第一印象についてお話したいと思います。

まずはパフォーマンスです。私の環境では、Mac OS XパブリックβをPowerMac G3 450MHzにインストールして使用しています。ネットワークのパフォーマンスを確認するために、付属の「Internet Explorer」(Carbonアプリケーション)を起動し、様々なサイトでのコンテンツ表示速度を確認してみました。(図1)


図1-Mac OS Xパブリックβ上のInternet Explorer

驚いたことに、日常的に利用しているPowerMac G4 450MHzでアクセスするよりもキビキビ動いています。ネットワークに関しては現状でもかなりのパフォーマンスが出ているようです。次に、AppleShare IP 6 Serverに対してのファイルの書き込みと読み込みの実験をしてみました。ファイルサイズや個数によって結果が違うようですが、Mac OS 9からのアクセスと同等か、それ以上のパフォーマンスは出ています。β版でこのパフォーマンスを発揮できれば、製品版にはかなり期待できるかもしれません。Mac OS Xは、Macintoshをネットワークに強いプラットフォームへと変身させてくれる可能性があります。ネットワークやその他I/Oに関する最適化はこれからが本番でしょうが、まずは好印象を持ちました。

モニターへの描画速度は思ったより高速です。私が強くそう思うのは、以前に使用していたDP4(Developer Preview 4版)が、あまりにもダラダラ表示だったのが原因です。描画速度はDP4との比較では相当に改善されていますが、これを最初に見た人は満足しないかもしれません。ウィンドウの選択や移動では表示が引っかかる場合もあり、特にウィンドウのライブズームは、お世辞にも心地よい速度とは言えません。ただし、Dockでのアニメーションやテキストエディターでのスクロール等は十分に高速です。ユーザ側からはビデオカードのアクセラレーションON/OFFは判断できませんが、多分OFFではないでしょうか?(図2)


図2-System PreferencesダイアログのMonitors設定

PowerMac G4にもインストールして、Quartz(Mac OS Xの描画エンジン)がVelocity Engineに対してどのくらい最適化されているかを調べてみたいところです。Appleの関係者が、「QuartzはVelocity Engineに対して最適化を行っており、これからもさらなる最適化を実行する」と明言していますので、それを信じて楽しみに待つことにしましょう。

次に付属の「QuickTime Player」(多分Carbonアプリケーション)を使い、色々なQuickTime Movieを再生してみました。(図3)


図3-Mac OS Xパブリックβ上のQuickTime Player

320x240ピクセルサイズ程度のMovieならば、3つ4つ同時に再生してもまったく問題ありません。当然、バックグラウンドでClassic環境などの別プロセスが多数起動していると、再生のパフォーマンスに悪影響が出ます。マルチCPUのPowerMac G4では、他のプロセスの負荷が大きくなった時にMovieの再生スピードはどう変化するのか?これも、ぜひ試してみたい項目のひとつです。続いて「StarWars Episode 1」の Movie(640x288ピクセル Sorenso Video)を再生してみました。モニターが32000色の場合にはスムーズに再生できますが、1600万色では定期的に映像が引っかかります。今度はこれをDouble Sizeで再生してみると、映像表示は紙芝居状態になってしまいました(涙)。QuickTimeのVelocity Engineに対する最適化が進んでいれば、PowerMac G4上では異なる結果が出るかもしれません。しかし、このMovieは同マシンのMac OS 9環境ではスムーズに再生できていますので、QuickTimeやCodecに関してはさらなる最適化が必要でしょう。ウェブ上でのMac OS Xのレビューを読むと「Movieの再生には満足できる」という評価もありますが、現状ではユーザを満足させることは無理だと思います。それでもDP4からは大変進歩していますので、こちらもさらなる最適化を期待したいと思います。

次は、Finder回りの使用感やGUIの変更点などについての感想です。これについては、ウェブや雑誌、もしくはユーザ同士の井戸端会議などなど、どこでもほぼ同じ評価になっています。結論としては「Mac OS 8や9と異なる箇所が多すぎる」「使えなくなった機能が多すぎる」といった点に要約されます。今までMac OS 8や9でMacintoshを活用していた人は、そこで便利に利用していた機能が突然無くなってしまったら戸惑うのが当然です。何らかの目的を達成するために無くした機能があるとしても、新たに加わった機能が優秀で、無くした機能を十分にカバーできるのなら問題はありません。しかし、Mac OS Xの場合は、無くした機能をすべてDockに押しつけようとしている気がします。ちなみに、私がMac OS XのFinderを使っていて特にイライラする事は...

・Finderのウィンドウタイトにフォルダ名が表示されていない
・Command-Nでフォルダが作成されずに新しいウィンドウが開く
・Finderのウィンドウの横幅を小さくできない
・フォルダやドキュメントにカラーラベルが付けられない
・ウィンドウシェイドやフォルダーナビゲーションが使えない
・メニューはグループ分けセパレーションが無いので見にくい
・メニューは透けている必要はないのでは?これも見にくい
・メニューバー真ん中のAppleマークが邪魔(笑)
・Empty Trashでいつも確認のダイアログが出る
・ゴミ箱がDockの中からデスクトップ上へ出せない。

などでしょうか?こうして上げた項目以外にも、バグとも仕様とも判断付きかねる不可思議な現象に遭遇することがあります。Finderウィンドウのカラム表示やファイル操作のUudoのように、便利で使い勝手の良い新機能もあります。しかし、ちょっとした「差異」が作業効率を下げるのもまた事実です。私は、マウスカーソルが下へ行く度に、ひょこひょことDockが飛び出すのがどうも好きになれません。モニター画面は上下より左右の方が広いわけですから、右側や左側にDockが置けるオプションがあっても良いのではと思ったりもします。Apple社には、FinderやGUIに関するユーザからのフィードバックに良く耳を傾け、その多くを最終版に反映させてもらいたいと思います。

最終的にはユーザの意見を反映し、いくつかの旧機能が復活するかもしれません。もしくは、それをカバーするために新たな機能が追加されたり、Dockの能力がアップするかもしれません。機能的に足りない部分は、サードパーティからそれを補完するソフトが発表されるでしょう。そういう意味では、Mac OS XのGUI回りについてはそんなに心配する必要はないかもしれません。「人が不便だと思うところに商売がある」というルールは、iMacの発表によっても証明されています。そのためにも、Mac OS Xには、別ソフトによる機能補完が、OS側とスムーズに調和するような仕組みが必要でしょう。例えば、優秀なランチャーを入手しDock機能を切ろうとしたとします(現状は切れない)。しかし、ゴミ箱がDock内にあるかぎり、それを切るわけにはいきません。デスクトップ上にゴミ箱を置けるユーティリティも登場するかもしれませんが、Dockからゴミ箱を出せるオプションぐらいは用意しておいて欲しいものです。

最後は、自作や愛用アプリケーションのMac OS X上での起動と動作確認です。まずはClassic環境でいくつかの愛用アプリケーションを起動してみました。ResEditやResorcerer、それからMetrowerks CodeWarrior Pro5などは問題なく起動します。(なぜだか日本語名のアプリは半角英語語名に変更しないと起動できない)(図4)


図4-Classic環境で起動しているResEdit

キューティマスコットも結構スムーズに動きます。(図5)


図5-Classic環境で起動しているマスコット達

Classic環境でCodeWarrior Pro5を使い、開発途上の自作アプリケーションを何十回とクラッシュさせたのですが、システム自体が落ちることは一度もありませんでした。これがMac OS X最大のメリットでしょう。欠点は、Mac OS 9(Classic環境)の起動を頻繁に繰り返さなければいけない点です。いちいちMac OS 9を起動していては時間もかかり非常に面倒です。Vertual PCのようにシステムイメージをそのまま保存することで、復帰を高速にするような仕組みは実現できないでしょうか?(多分ユーティリティが出るような気がしますが...)

続いてCarbon化したアプリケーションのチェックです。まずはApple Works 6を起動して利用してみました。そんなに長くは使っていませんが、見た目は問題もなくパフォーマンスも良好です。Apple Works 6がちゃんと動くと言うことは、CarbonLib 1.04をリンクしてCarbon化したアプリケーションはみんな問題ないという証拠です。さっそく、自作のCarbonアプリケーションを起動してみると、DP4の時とは比べ物にならなほど安定していることが分かりました。(図6)


図6-Mac OS Xパブリックβ上の自作Carbonアプリケーション

ただし、コントロール、ダイアログ、ドラッグ&ドロップといった各マネージャには明らかなバグがあります。また、保存したドキュメントにアイコンが付かなかったり、ドキュメントを作成したCarbonアプリケーションが存在しているにもかかわらず、Classic環境を起動しようとする不都合も見受けられます。どうも、Mac OS XはNative環境とClassic環境の関連づけの部分に、まだまだ改良の余地がありそうです。

続いて、Carbonアプリケーションに生まれ変わった最新のMetrowerks CodeWarrior 6.0も試してみました。ソースコードのエディット、コンパイル、リンクといった一連の作業はまったく問題ありません。(図7)


図7-Mac OS Xパブリックβ上のMetrowerks CodeWarrior 6.0

なにやらディバグで問題が出るそうですが(私は使わないので分からない)そのうち改善されるでしょう。後は、旧石器時代のプログラマーとしては、誰かがResEditやResorcererをCarbon化してくれると嬉しいのですが(笑)。それはさておき、制限付きですがMac OS XのNative環境でソフト開発ができる雰囲気が漂ってきました。ちなみに、ADCメンバーにはMac OS Xパブリックβとは別に「Mac OS X Public Beta Developer Tools」というCD-ROMも配布されています。これには、Apple社がMac OS X用に開発を進めてきた「ProjectBuilder」や「InterfaceBuilder」といった最新の開発環境や、それ付随する多くのツールが含まれています。これらの内容や完成度についてはADCの守秘義務のため話せませんが、今までにMPWとReseditという貧弱な開発環境しか提供できなかったApple社にとっては大きな進歩です。(今年のWWDCでも紹介されていた)

Apple社が、自社プラットフォーム用の開発環境の提供に真剣に働いてるという事実は、Macintoshの開発環境に新しい選択肢が増えることを意味し、大いに歓迎される事です。Macintoshが「物を作る道具」であるなら、「道具を作る道具」が重要であることは言うまでもありません。こうした新しい開発環境に興味があり、Mac OS Xの製品版の登場まで待てないという人は、この機会にADCのSelectメンバー(年間$500)に参加してみてはどうでしょうか?今なら、参加費の元を取ってお釣りが来るぐらいエキサイティングな体験ができます。Mac OS Xを製品版として仕上げるのには、まだまだ乗り越えなければいけない高い壁がありそうです。しかし、Carbonアプリケーションを安心して確認できる環境を手に入れた事は、我々プログラマーにとっても大きな一歩です。さらに使い込んで、出来る限りのフィードバックをApple社へ送りたいと思います。

次回はコントロールの話しに戻ります。実際にResorcererを使い、ダイアログにいくつかのコントロールを配置する過程を説明してみます。そんな事は簡単だと思われるかもしれませんが、これはこれで色々と秘密が隠されているのです(笑)。こうご期待!

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