● プログラマー独り言 WWDC2003参加レポート(2003/08/05)

例年ならサンノゼで5月に開催されるWWDC(World Wide Developer Conference) ですが、今年はイラク戦争と製品開発スケジュールの影響(?)で6月に延期され、場所もサンフランシスコへと変更されました。会期が延期されたおかげで、デベロッパーへはPanther(Mac OS X 10.3)のプレビュー版が配付されることが確約されていました。それに加えて、PowerMac G5やiChat AVの発表、Safari GM版の登場、おまけにiSight( FireWireカメラ)がお土産として全員に配付されるなど、予想外の嬉しい出来事が起こった一週間となりました。開催場所も田舎町(笑)から大都会へと移ったおかげで、食事や観光のオプションも充実し、参加者も最終日まで減る(帰える)ことなく熱心にセッションに耳を傾けていました。

毎年恒例の個人的な興味として、WWDCに参加しているデベロッパーがどんな機種のモバイルマシンを所有しているのか注目することにしています。今回は15インチのチタンPowerBook G4が圧倒的に多数でした。17インチのアルミPowerBook G4を利用してい人が予想以上に多かったのも印象的でした(さすがUSA)。総数では12インチPowerBook G4とイイ勝負(ひょっとするとそれより多かったかも?)でしたね。14インチを含め、iBookを持っている人はチラホラ見かけましたが、さすがに黒色筐体のPowerBook G3を使っている人は少なく(絶滅寸前)、シェルタイプのiBookにいたっては開催中にたった一台しか遭遇しませんでした(ほぼ絶滅)。さて、来年はこの構成がどう変化しているのでしょうか?今からとても楽しみです。

アップル社の発表によると、WWDC2003には日本から250名近い方が参加されていたようです。すべてのセッションには日本語同時通訳が入りますので、世界の他の国と比較しても日本のデベロッパーは優遇されています。今回のセッションの特徴は、QuickTimeコンテンツ、エンタープライズ、インターネット&ウエブなど、開発関連以外のトピックスが格段に充実していたことです。おかげで、多くのセッションから聴講したい物をひとつだけ選ぶのが大変でした。今までのようにハードウェアやソフトウェア技術者だけをターゲットにした「バリバリ」のセッションもありましたが、内容のバリエーションが増えたおかげで、WWDC参加者の職業分野も広がっていたのではないでしょうか?このような別分野の人達と様々な情報を交換するのに、WWDCは非常に有意義な機会を提供してくれます。WWDCが、Macintoshデベロッパーの会議というより、Macintoshコミュニケーションの一大イベントへと変貌を遂げつつあると感じたのは私だけでしょうか?

今回主役のPantherですが、こちらはJobsのキーノートでいきなり数多くの新機能が紹介されました。その中でも、デベロッパー仲間で一番受けが良かった機能は「Expos氏vです(笑)。Pantherを待たずして、Mac OS X 10.2に単独実装してほしいという声が上がるほどです。Apple社としても「デスクトップに散乱したウィンドウをどう整理したらよいのか?」に対する答えを長い間模索して来たようですが、今回の解決方法はなかなか見事だと思います。また、動作環境(起動アプリケーションなど)を保持したままアカウントを切り替える「Fast User Switching」や、ファイルナビゲーションダイアログの大幅な変更は、不満を持ていたユーザに大いに歓迎される(拍手が大きかった)でしょう。それから、Jobsのデモで気づいた人はいたでしょうか?何とメニュー項目のグループ分けに使われていたセパレータ(横線)が復活していました(笑)。

新Finderについては、新しいブラウジング方法、新しいToolBar、メタルウィンドウの採用、待望のラベル機能などなど、その実装方法については再び賛否両論が噴出しそうですが、とりあえずパフォーマンスが上がり、Mac OS X 10.2で存在していた多くのバグが完全にフィックスされていることを祈りたいと思います。一番がっかりしたことは、Dockの機能拡張がまったく紹介されなかったことです。Dockに対する要望は沢山上がっていると思うので、正式版では何らかの発表があることを期待したいと思います。OS自体の完成度としては、昨年のWWDCで配付されたJagure(Mac OS X 10.2)のプレビュー版よりも高いような気がしました。まあ、あの時より一ヶ月遅れての配付ですので何とも言えないのですが、約束通り年内発売に向けて努力してもらいたいと思います。

続いて開発ツールについてです。Apple社はPantherと同時に「Xcode」と呼ばれる新し開発ツールを発表しました。Xcodeは、今までDeveloper Toolsに付属していたProject Builderの新版となります。機能の詳しい内容は、以下のApple社のサイトに掲載されていますので参照してみてください。

http://developer.apple.com/tools/xcode/index.html

Xcodeには、gcc 3.3の採用、Rendezvousを利用した分散コンパイル、リンクを省略できる仕組み(Zero Link)、アプリを実行中でもソースコードを書き換えることでその変更を反映させることができる機能など、開発期間の短縮をサポートするための多くの機能が実装されています。ただし、Interface Builderの拡張に関してほとんど話がなかったのが残念でした。Cocoa対応のNibに関しては幾つかの興味深い機能拡張が紹介されいていましたが、Carbon対応のNibに関しては、それほど大きな変更はありません。Project Builder(Xcode)とInterface Builderは、Developer Toolsの両輪であり、両方のツールのスムーズな連携により開発期間の短縮が可能となります。例えば、ToolBarのようなユーザインターフェースオブジェクトについても、Interface Builderで簡単に編集できるよう改善してほしいところです。開発ツールの拡充は、数多くの自社アプリケーションを世に出しているApple社にとっても重要な課題です。よって、これからの開発ツールの進展についても期待が持てるのではないでしょうか?

今回一番の注目点は「Web Kits」や「Search Kits」といった、今までApple社のシステムのみで利用されてきた機能(ライブラリ)が、外部デベロッパーでも使えるようになったことです。「Web Kits」を使えば、Safariで用いられている高速HTMLレンダリングエンジンを、そのまま自作アプリケーション内に組み込む(エンベッド)ことが可能になります。たとえば、iTunes 4で導入された「Apple Music Store」へのアクセスなどが実例です。Pantherに添付されるヘルプビューアやMailなどのアプリケーションでも、この技術が採用されるもようです。「Search Kits」の方は、Finderといくつかのiアプリが実装している高速サーチ機能を、一般のアプリケーションでも活用できるようにしてくれます。Apple社には、こうした自分たちだけで使っていた(ある意味ではズルをしていた)システムモジュールを、これからもどんどんオープンにしてもらいたいものです。

Mac OS Xが登場した当時は、Carbon FrameworkとCocoa Frameworkで実現できることの差がとても大きかったのですが、それが随分と小さくなった印象を受けました。例えばCarbonでは、その仕組みをCocoaに近づけるため、Carbon EventやHIViewといったシステムの基盤を新規追加してきたわけです。ここへ来て、やっとその努力が報われる時が来ました。またCocoaに関しても、今までなかったQuikcTime関連のクラスが追加されるなど、Carbon APIに頼らなければならなかった弱点が補完されています。Java、X11、UNIXといった開発環境についても同様なことが言えるでしょう。どんな方向から攻めても、最終的にはAquaライクなアプリケーション開発が可能になるというのが、Apple社が目指す究極の目標のようです。ただし、Pantherによりすべてが達成されるかと言うとどうもそうではなく、もう数段階システム拡張がなされる必要があるだろうと感じました(セッションを聞いていて...)。

WWDC2003で紹介されたトピックスについて簡単な印象を述べてみましたが、より詳しい技術解説と報告は、7月24日(木)にアップル社で開催される「MOSA WWDC2003報告会」で行う予定です。最後に、WWDC2003に関連した技術資料やツールをいくつか紹介しておきます。WWDC2003のセッションに関連した多くの技術資料は、ほとんどがADCメンバーサイトからダウンロードすることが可能です。またDeveloperサイトには、PowerPC G5(PPC 970)に関連した3つのテクニカルノートが登録されています。

TN2087 PowerPC G5 Performance Primer
TN2086 Getting Started With Apple's New Architecture
TN2090 Driver Tuning on Panther or G5

http://developer.apple.com/technotes/indexes/whatsnew0.html

PowerMac G5のハードウェア仕様については以下のドキュメントが参考になります。

PowerMacG5.pdf(94ページPDF 2.8M)

http://developer.apple.com/documentation/index.html

WWDCのパフォーマンスセッションでも詳しく紹介されていたのですが、Apple社が提供しているCHUD (Computer Hardware Understanding Development )Toolkit の最新版「CHUD_3.0.0b24」も、すでに入手可能となっています。興味ある方はダウンロードして試してみてください。

http://developer.apple.com/tools/performance/

WWDC2003の全セッションの映像は日本語訳付きのDVD-ROMとして販売される予定ですので、参加されていない方はそちらを購入されることをお勧めします。参加された方には無料で郵送されるはずですので、もうしばらく待ちしましょう!

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