● プロローグ
みなさん、こんにちは。お宅のiMac君の調子はいかがですか?我が家のリビングにやって来たiMac君は、うちの奥さんの良きパートナーとして活躍中です。外付けディスク、プリンター、PCカードリーダ、USBハブなどなど、次から次へとスケルトングッズをコレクションに加えているiMacユーザも少なくないでしょう。
ところでみなさん、最近ショップへ出向き、何か面白いマック用ソフトを購入されましたか?「iMacにバンドルされているソフトしか使ったことがないなぁ」という人、挙手してみてください。結構多いんじゃないでしょうか?最近は、パソコン本体だけでなく周辺機器にまでバンドルソフトがてんこ盛りです。よって「ソフト=おまけ」といた感覚が一段と色濃くなってしまいました。また「ネットサーフィンするためにパソコンを買ったんだ。」とか「インターネットでメールができればいいのよ。」もしくは「ビジネス用だからOffice 98があればOKさ。」と言った具合の「単目的」のためにパソコンを購入するユーザも増えています。
これはこれで悪い事ではありません。「パソコンの家電化」と言われて久しいですが、現実はそんな甘い状況ではありません。安くなったとは言え、個人で購入するにはまだまだ高価です。使い方が簡単になったと言っても、クラッシュしているうちは偉そうな事は言えません。そんな中、ちゃんと目的を持ってパソコンを購入しようとしている人達には心から拍手を送りたいと思います。ところが逆に「目的外」の事にチャンレンジしてみようというユーザの割合はどんどん減ってきているような気がします。
昔々、私がパソコンと付き合い出したころ、パソコンを購入する唯一の理由は「何か面白そうだから」「何でもできそうだから」という興味本位だけでした。これといった目的は無かったわけです。しかし逆に、変なアイデアのソフトがで出る度に、どんな小さな情報もかき集め、すぐさま飛びついて使ってみました。食う金に困っていてもです(笑)当時、私と同じような感覚でパソコンに接していたユーザが多かったと思います。おかげで初期のソフトは市場でもまれ、試され、淘汰され、現在のように成長できたのかもしれません。ところが結果として「実用」ばかりのソフトが主役となってしまいました。雑誌などの情報提供もそうしたソフトを集中とし氾濫しています。面白いソフトに出会う機会が少なくなった昔気質のユーザにとっては、ソフトの「成熟期」と言うより「停滞期」という感じがしてて、ちょっと寂しい気がします。
●キューティマスコットの歴史
では、昔気質のパソコンユーザが絶滅してしまったかというと、私はそうではないと信じています。確かにビジネスユースのユーザがかなり増殖したのは事実です。しかし同時に、女性、子供、お年寄りといった、今まで関わりが薄かった人達の間にもパソコンはどんどん普及しています。そういう人達の中には、何かを求めて目を輝かせている「夢見るパソコンユーザ」がまだまだ沢山いるのではないでしょうか?
これからお話をする「キューティマスコット」(図1)は、筆者が5年前に開発したマック専用のアプリケーションです。何をするアプリケーションかと言いますと、マックのデスクトップを動き回るデスクトップ・アニメーション(図2)を作成するためのツールです。このデスクトップアニメーション、それ自体が単独アプリケーションでして、動き回るだけでなくユーザからの「ちょっかい」(マウスクリック、キー入力、音声認識etc)に反応して色々な「芸」をします。芸の種類も豊富で、サウンドを鳴らしたり、喋ったり、吹き出しを表示したりするのは朝飯前、やろうと思えば他のアプリの起動や終了、指定ホームページのオープンなどの芸当も可能です。
このキューティマスコットで作成した起動アプリを「マスコット」と呼びます。1993年キューティマスコットが誕生した時は、ちょうどNIFTY-Serveのような商用BBSの全盛期でした。キューティマスコットは登場するなり、沢山のマックユーザ(昔気質の)に気に入られました。すぐさま大量のマスコットがネット上にアップロードされ、多くのマックユーザのデスクトップを賑わしたと言うわけです。NIFTY-Serveの女性メンバーの中には、ネット上でマスコットを販売し、冷蔵庫や洗濯機の購入資金を稼いだ強者もいました。NIFTY-Serveにアップロードされた多くのマスコット達は、うちの会社が出しているCD-ROM「All of The Mascot 」(写真1CD-ROM)に納められています。このCD ROMだけで600体以上マスコットが納められています。
キューティマスコットは、よくスクリンセーバやアイコン作成のソフトと比較されますが、スクリンセーバには「スクリンセーバ」という目的がありますし(笑)アイコンにだってちゃんと利用価値があります。ところがキューティマスコットは、そうしたはっきりとした目的を持ち合わせていない不思議なソフトなのです。とりあえず「おもちゃを作るソフト」と考えると分かりやすいかもしれません。もちろん目的がないから何も役に立たないと言うわけではありません。キューティマスコットを使えば、自己表現の楽しさ、物を創造する楽しさ、目的を達成する快感、つまるところマックを使う「本来」の楽しさを味わうことができます。こうした感覚、味わったことがない人には理解しがたいようですが、家庭ゲーム機で謎解きと情報集のみに夢中になっている今の子供達にぜひ味合わせてあげたいと思いませんか?お父さん、お母さん!!
●キューティマスコットで何ができるのか?
今までキューティマスコットはPowerPC Nativeした以外は、さほど大きなバージョンアップをしてきませんでした。その代わりに「MascotPlayer」「MascotTools」「MascotWorld」という3つの関連ツールを登場させることで、その世界を広げてきました。(図3)まずMascotPlayerはマスコットをインターネットのウェブブラウザで表示するためのツールです。MascotPlayerはマスコットデータをPlug-in用データに変換します。変換されたデータはウェブサーバに登録することができ、同時にリリースした「MascotPlayer Plug-in」を利用してマスコットをブラウザ上で動かすことが可能です。また、このマスコットをクリックして別のURLをオープンするような機能も追加されています。(図4)
MascotToolsは、キューティマスコットの能力を増幅するツールです。(図5)コードネームは「鉄腕アトム」と言い(笑)キューティマスコットに7つの能力を追加します。(最終的には8つになりました)このツールによりマスコットは2倍から10倍までの拡大表示ができるようになりました。またバックグランドミュージックを鳴らしたり、音声認識なども可能です。そして昨年発表したMascotWorldは、今ままで作成してきたマスコットを背景ウィンドウの上で同時に複数動かすためのツールです。マスコットとマスコット、マスコットと背景は互いにコミュニケーションが可能で、マスコットから別のマスコットをON、OFFしたり、マスコットからの命令で背景を切り替えたりができます。MascotToolsは、登場人物をマスコットで表現した「電子絵本」などを作成するのにはもってこいのツールでした。(図6)
では、ここでキューティマスコットとその仲間達がどんな機能を持っているのかを一覧表にまとめておきたいと思います(表1)
●キューティマスコット++とJr.の登場
さて、5年の間にMacOSやQuickTimeの能力も改良され、マスコットに追加したい新しい機能も沢山たまりました。また煩雑さを無くすために、先ほどの「Mascot Player」「MascotTools」「MascotWorld」をキューティマスコットとうまく統合する必要も出てきました。そこで今までユーザから頂いたご意見やQuickTime 3.0の新機能を加え、キューティマスコットもまったく新しいソフトに生まれ変わることになりました。新しいバージョンの最大の目標は、新機能を充実させる事だけではなく、今までのキューティマスコットの「使用感」を損なわないことです。そこで、キューティマスコットを「今までの機能に満足していないユーザ」用と、「キューティマスコットを気軽に楽しく使いこなしたいユーザ」用(子供なんかがこれに含まれると思います)に分けて開発することにしました。前者を「キューティマスコット++」後者を「キューティマスコット Jr.」と言います。
今までのキューティマスコット同様、キューティマスコット Jr.の使用感は軽快で快適です。アニメセルをどんどん描いていくだけで、誰でも簡単に「マスコット」を作成することができます。キューティマスコット Jr.は、なるべくマウス操作だけでマスコットのエディテイングができるように旧版から設計し直されています。あるソフトが子供に受け入れられるかどうかは、使用頻度の高い操作がマウスだけでできるかどうかという点が重要になってきます。例えばマスコットの動きも、数値入力で決定する方法からマウスドラッグだけで決定できる方法に改良されました。またMacOS 8.5やQuickTime 3.0の新機能もソフト内でフルに活用されています。アニメセルは描くだけではなく、ドラッグ&ドロップで別ファイルから取り込めます。Movieからコマ落しで画像を取り込んだり、回転させている3DMFオブジェクトから画像を取り込む事も容易です。(図7)加えて、ビデオから映像やサウンドを取り込む機能もありますので、実写版マスコットの作成もより簡単に楽しめるようになりました。(図8)
キューティマスコット Jr.と比較してキューティマスコット++はマスコット作りの「プロ」の方々の意見を大幅に取り入れています。MascotWorldと同様に背景上でマスコットを動かせるのは勿論、ディスクトップ上でも複数のマスコットを動かすことが可能です。旧バージョンよりはるかに密に「ユーザとマスコット間」「マスコットとマスコット間」のコミュニケーションがコントロールできます。またマスコットを使ったゲーム作成なども考慮して、高速表示モードや背景全体を2倍拡大表示するモードも用意しました。なんと言ってもキューティマスコット++の最大の特徴は、プログラミングで使われている「変数」と「乱数」を導入したことです。この変数と乱数、そして新しく追加された「実行条件」や「プログラミング」といった機能を併用することで、かなり複雑なアプリが作成可能になりました。例えば、2Dシューティングゲームや大ヒットした「たまっごっち」のような電子ペットも割と容易に作成できます。
●キューティマスコット++とJr.の新機能
それでは、キューティマスコット++とJr.の新機能を詳しく見てみることにします。まずキューティマスコット Jr.は「旧キューティマスコット+MascotPlayer+MascotTools+α」という図式になります。(図9)「+α」の部分には以下のような機能が追加されています。(表2)この中で一番要望されていた機能は「もっと大きなマスコットを作りたい」というものです。旧マスコットは64ドットX64ドットのマスコットのみ作成できました。旧キューティマスコットが登場したころのマックの搭載メモリと画面サイズを考えれば、当時としてはこれが妥当な仕様だったわけです。しかし現在、エントリーマシンのiMacでさえ大部分のユーザが96Mバイト以上のメモリを搭載しています。画面サイズも800ドットX600ドット以上が普通ですし、処理スピードときたら私の開発用マシンより高速です。(PM7600/200)そこでキューティマスコット Jr.のペイント機能は、256ドットX256ドットまでのマスコットが描けるように拡張されました。また作画時には下絵や格子を表示する機能も利用でき、さらにアニメーションが描きやすくなっています。
キューティマスコット++の方は「キューティマスコット Jr.+MascotWorld+α」と言う図式になります(図10)。キューティマスコット++の「+α」には以下のような機能が追加されています。(表3)新顔の機能の中でみなさんが一番興味を持たれるのは「プログラム」かもしれません。プログラムと言うと、C言語、HyperTalk、AppleScriptなどを思い出します。プログラムなので「言語の文法を覚えることから始めなければいけないのか?」と思われがちですが、キューティマスコット++のプログラミングではその必要はまったくありません。変数はアニメーションセル同様ウィンドウ上で管理します。プログラミングで実行したい機能や実行条件はメニューから選択し、リストに順番に並べるだけで作業は完了します。(図11)
● マスコットを作って動かしてみよう
本連載ではキューティマスコット++(以下マスコット++)の方で作品を作る課程を解説いたします。これから説明する作業の大半は今月号のCD-ROMに添付されている「キューティマスコット++デモ版」でも実行できますのでぜひ試してみてください。ではさっそくマスコット++を起動してみましょう。起動後、マックのモニタにウィンドウがひとつ現れます。このウィンドウをマスコット++では「プロジェクトウィンドウ」と呼びます。続いてウィンドウ上部の「新規」ボタンを押してみてください。黒猫アイコンが付いた空のセルがウィンドウ上にひとつ現れます。これをアニメセルと呼びます。まだ何も描いていないので、その中身は真っ白です。このセルをマウスでダブルクリックすると、マックでは見慣れたペイント(作画)用のウィンドウがオープンします。(図12)
まずは作画エリアに適当な絵を描いてみましょう。描き終わったらペイントウィンドウ上部の「登録」ボタンを押してください。描いた絵が先ほどのプロジェクトウィンドウに登録されることがわかります。これが一枚目のアニメーションセルになるわけです。続いて横の「追加」ボタンを押してください。一枚目とまったく同じ絵がプロジェクトウィンドウに追加登録されます。この2枚目のセルをペイントウィンドウに呼び出して絵に少し変化を加えてやります。この「ちょっとした変化」こそがアニメーションの命となります。2枚目を再登録した後にプロジェクトウィンドウにもどり、編集メニューの「すべて選択」で2枚のセルを両方とも赤くします。(選択するという)そしてウィンドウ上部の「G」ボタンを押せばグループ化が完了します。(グループ化の詳しい話は次回にまわします)(図13)
先頭のセルの黒猫アイコンをクリックすると、アニメーションの動作方向を決めるウィンドウが表示されます真ん中あたりに、今描いた二枚のセル画像が重なって表示されています。これをマウスドラッグして適当な方向へ移動させてみてください。これでアニメーションが動く方向が決まりました。(図14)それではさっそく、このアニメーションをデスクトップ上で動かしてみましょう。プロジェクトウィンドウに戻りプロジェクトメニューから「動作確認...」を選びます。多くのチェックボックスが並んだダイアログが表示されますが、気にせず「OK」ボタンを押してください。全ウィンドウが一度クローズされ、デスクトップ上を今作ったばかりのマスコットが動き出します。どうですか?うまくいきましたか?(図15)
動作確認メニューから「確認終了」を選ぶか、コマンドキーとピリオドキーを同時に押すことで動作確認は終了します。動作確認が終了したら、今度はマスコットを単独で動くアプリケーションに変えてみましょう。これをマスコットの「アプリ化」と呼びます。残念ながら、ここからの作業は「デモ版」ではできませんのでご了承ください。プロジェクトメニューから「アプリ作成...」を選びます。やはりダイアログが現れますが気にせず「OK」ボタンを押してください。アプリのファイル名を入力して「保存」ボタンを押せばアプリ化が開始されます。ファインダ上にマスコットアプリのアイコンが表示されれば作業完了です。(図16)このアプリは当然マスコット++がなくても起動できますので、メールで配ったりネットにアップしたりと自由に扱うことが可能です。アプリ化したマスコットには好みのアイコンやアバウトも付けられるのですが、その話はまた別の機会に紹介したいと思います。
●エピローグ
とにもかくにも、ちゃんと毎日使われているパソコンは幸せです。いったい今まで何台のパソコンが家の片隅でホコリをかぶり、そのまま粗大ゴミとして一生を終えたでしょうか?確かにパソコンはビジネス「でも」活用できます。しかし、決してそれだけがすべてではありません。生活やコミュニケーションをエンジョイするための道具、多くの友人を見つけるための道具、自分の知らない世界の扉を開いてくれる道具、自分の思いがけない能力を発見、増幅してくれる道具、可能性を上げればきりがありません。マックはそうした可能性を兼ね備えた道具なのです。だからこそ「遊び」や「おもちゃ」といった身近な発想から何か新鮮な物を発見できるマックらしいソフトが、もともっと登場することが望まれます。
次回は、「インターラクティブ・マスコットを作ろう?」という題目で、マウスクリックやキー入力など、ユーザからの「ちょっかい」に反応するマスコットを例題にマスコット作りの楽しさをもっともっと紹介したいと思います。
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