2005/9/28(水 mercoledi)晴 ■トレヴィーゾへ■

列車の旅が好きだ。窓の向こうに流れる景色を眺めながら旅をするのは楽しい。だいぶ少なくなってきたがコンパートメントの列車に当たると、思い掛けなく会話が弾んだりして、それを鬱陶しいと思う人も中にはいるのかも知れないが、さらに旅は愉快になる。もちろん時間通りに来なかったり、途中で遅れたり、そう言うことも度々あるが、それでも大好きな列車の旅。

マントヴァからトレヴィーゾ Trevisoも車窓から見える景色を楽しんだ。ラディッキョ Radicchioが名産のトレヴィーゾも初めての町。どんな姿を見せてくれるのか。予約をしたホテルは町の外。駅からホテルまでは町を挟んでだいぶ距離がありそた。タクシーに乗る。城壁で囲われた町をぐるっと回るようにタクシーは走り、やがて一本道を直進してホテルに着く。古いヴィラを改装したプチホテル。ホテルで働くおばさんたちもいい感じで快適に過せそうだ。さっそく荷物を置いて町へ出る。メイドのおばさんたちが言うには町中まで20分程度。バスもあるけれど歩くのがお勧め、と。歩き出して間も無く、アドヴァイスにしたがったことが正解だったことがわかる。町へと続く並木道は小川に挟まれて歩道があり、金木犀の香りが芳しい。そしてその道沿いには大きなお屋敷が並ぶ。ほどなくして町へと入る立派な門に着く。ここまでちょうど20分。イタリアでは1時間も20分だったりするけれど、おばさんたちの20分は正確だった(笑)

トレヴィーゾの町は、町の周りをぐるっと川が囲むように流れていて、町中もあちこちに川と運河が流れている。こぢんまりとした風情のある町。なぜか多くの人が足下がぴかぴかのスニーカー。なぜスニーカー率がこんな高いのかしら(これは後で理由が判明)。それにそこはかとなく町全体にお金持の空気が漂う。あくせくした雰囲気がなくのんびりした中に豊かな空気を感じる。そしてここは他に比べて物価が安い。まずは通りがかった地元の人で賑わう小綺麗なお店 EL SOTOPORTEGOに入る。パニーノを頼んだらホットサンドにしてくれた。きのこ・スペック(薫製プロシュット)・ゴルゴンゾーラがライ麦パンに。この組み合わせは真似してみよう。働く女性たちはサラダだけをランチにしている人も多い。一昔前のNYスタイルっぽい。今ここで流行りなのかな。

観光客はあまり見かけない。またまた偶然通りかかったリストランテ。調理人がちょうど外へ出てきた。美味しいニオイがする(笑)よしっ。今夜の夕食はまずここで。予約をして、散策を続ける。歩き疲れたらバールで喉を潤し、またてくてくと町を探検。すっかり私たちの旅のスタイルになった。とにかく歩いて歩いて歩く。でものんびり。ガイドブックも使うけれどまずは自分たちの足と目で。最初の頃はもちろん名所旧跡をくまなく見ようとしたけれど、いつのまにか歩いて食べて飲む、にシフト(笑)今夜は何が食べられるのか今から楽しみだ。

どこの町にも大きな広場があり市民の憩いの場となっている。ここではシニョーリ広場 Piazza dei Signori、その広場にはすばらしい煉瓦造りの300人の館 Palazzo dei trecentoが経つ。そしてここはベビーカーを押したお母さんたちのたまり場だった!カッフェの椅子に座り、広場に集まる人たちを眺めるのはとても楽しい。

さて、日も暮れて夕げの時間。予約をしたリストランテ TONI DEL SPIN へ。奥まった部屋へ通される。オレンジカラーで楽しげな部屋。トリッパの煮込みとイカのタリアテッレ、ウサギのラグーのガルパネッリ Garpanelli、付け合わせに野菜のグリル。ここではイカをSeppeと言うらしい。Seppiaという単語しか知らなかったので、メニューを見て悩んでいたらお店の人がSeppiaのことだと教えてくれる。土地の言葉を覚えるのも旅の楽しみのひとつ。どれもとても美味しかった。となりのアメリカ人のカップルとちょっと会話。なかなかユニークで楽しい二人でした。ワイン好きイタリア好きに悪いひとはいない(笑)

今日も大満足の内に夜は更けて、またてくてくと宿まで歩き、幸福な気持ちで眠りにつく。


2005/9/29(木 giovedi)夜半にものすごい雷雨 曇り のち 雨 ■プロセッコの町へ■

プロセッコ Prosecco(スパークリングワイン)で名を知られる隣町、Coneglianoへ。残念ながら、葡萄祭り Festa dell'uvaは終わっていたけど、中世の面影を色濃く残した可愛らしい町。ちょうどお昼の時間。いつものように鼻を効かせて美味しそうなお店に入る。ビンゴ(笑)スモークしたガチョウの薄切りや、ラディッキョ入りのペンネッティなど美味しくいただく。ワインは名産のプロセッコ。お店のおじさんが発泡していないプロセッコをTranquillaと表現していた。へぇ、そう言うんだ。そしてプロセッコはどれも発泡だと思っていたので、驚いた。せっかくだからTranquillaを。ワインと食事もまさに一期一会の出会い。大切にしなくちゃね。お勘定のときに「仕事で来てるの?」と尋ねられる。あまり日本人の観光客はここまで来ないのかしら。ここでも隣のテーブルの女性二人はサラダだけ食べていた。やはり流行りなのか。つまらないの(笑)

お腹がいっぱいになったところで町のてっぺんを目指す。てっぺんにはお城の塔の部分だけが残っている。そして中には展示がしてある模様。高いところが好きな私たちとしてはぜひ入らなくては。お昼休みの間、スケッチをして過す。その内雨が降り出した。バールに入り時間をつぶす。あまりに寒いのでお酒ではなくラッテマッキアート、ホットミルクにちょっだけカッフェを垂らしたもの(カッフェマッキアートの逆)を注文。町の反対側の斜面には葡萄畑が広がる。雨にけむる風景もなかなか良し。ここでスケッチをしたり下手な歌を詠んだり。そうこうしている内にお昼休みが終わり、塔の中へ。ぎしぎし言う急な階段を上る。塔のてっぺんから見下ろすコネリアーノの町はとても可愛らしく美しい。イタリアの町は上から眺めるとさらに美しさを増す。そして列車で一駅だけでもそれぞれに個性があって面白い。帰る頃には雨足も強くなってしまったが、レンガと石畳の町には雨もよく似合う。日帰りの短い滞在だったけれどコネリアーノの町を堪能。

トレヴィーゾに戻り、お目当てのトラットリアを目指す。思ったより遠い上にだんだんと住宅街へ。こんなところに本当にお店があるの〜、と泣きそうになりながら、あの灯が違ったら戻ろうよ、と最後の望み。そこがお店でした。よかった!オープンにはちょっと早いけれどお店に入れていただく。お店の方たちがもう少しお待ちくださいねとさかんに恐縮する。いえいえ恐縮するのは時間より前にお店に入れてもらった私たちですよ。そうしたらなんと、グラスワインを待っている間にどうぞ、と。感激です。諦めずお店を探して本当によかった。店内はイタリアンモダン。ワインの品揃えがなかなかすごい。程なくして開店時間となる。メニューはどれも美味しそうで迷う。迷った末にターキーの冷製、小ダコとお豆の料理(これがもう抜群!)、キノコのパッパルデッレ、トリッパのオーヴン焼にする。それに合わせてAmphora 2001 Castello di Lispida。この白ワインがまたとても良かった。後で分かったことだけれど、昔のようにテラコッタで醸造しているらしい。名前の"アンフォラ”は伊達ではなかったのね!この作り方のワインをある人が「酸化させたワインは好きではない」と評していたけれど、「酸化している」とは思わなかった。「熟成」だと思うし(熟成も酸化という議論はここではなし・笑)、とにかくその事実を知らないで飲んだのだけれど個性がありとても美味しいと思った。力づくの印象もなく。この話題はまたページを変えるとして、食事の続き。お料理はどれも個性があり美味しかったのだけれど、パッパルデッレとトリッパのオーヴン焼のテイストが少しかぶってしまった。それゆえ美味しいのにトリッパを残すことになった。しゅん。組み合わせはとても大事ですね。とにかく歩いて良かったと思える食事とワイン、そしてサーヴィス。飲んだワインを買って帰りたいと思い、売っている酒屋を教えて欲しいと尋ねたら、酒屋は遠いと言う。お店で買うより5ユーロ高くなるけれど、よければ分けますよ、との申し出。うれしい言葉に甘えることにした。だってわざわざ出向くことを考えたら5ユーロは安いもの。お土産ワインを下げてよい気分で宿に戻る。タクシーだとあっという間だ(笑)あっ、傘を忘れた!


2005/9/30(金 venerdi)快晴 ■ウーディネへ■

知人からウーディネ Udine(フリウリ・ヴェネツィア・ ジューリア州)がいいと聞いていた。次の滞在地トリエステからの方が近いのかもしれないが、そちらは2泊の予定だし、昨日の雨がうそのような真っ青な空が広がった今日、トレヴィーゾから足を延ばすことにした。それにしてもなんとも芳しいのは金木犀。

ウーディネの街はすこんとした印象で静かな明るさがある。本によると“イタリアとスラヴとゲルマンの伝統が奇妙に混ざり合い残っている”そうだ。青い空と建物の白っぽい大理石、そのコントラストがが美しい。高台からは国境の山々が見渡せる。そう言えば行ってみたかったサウリス Saurisはここから車で2時間とか。あの山の麓にあるのか。写真で見るとチロル地方の村みたいだった。いつかきっと!

そんなことを考えながらお昼に入ったオステリアにはニョッキ・ディ・サウリス Gnocchi di Saurisがあった。これは食べなくちゃ。だってまだ見ぬサウリスだがマイブームなのだ。もうひとつドルチェの欄にグバーナ Gubanaの文字。これも一度食べてみたかった。何と云う幸せ。その場所に行かずして味わえるのはとても幸運だ。このお店。映画にでも出てきそうな古びた雰囲気がとてもいい。椅子もテーブルもがたがた。ギンガムチェックのテーブルクロスもお世辞にもきれいとは言えず。古い馬具や絵が無造作に壁にかかる。そしてカメリエーラがテレビに出ている、あの「ちあき」ちゃんにそっくり。ちょっと不機嫌そうに喋るところもそっくり。私たちはお店を出るまで「ちあきちゃん」と呼んでいました(笑)お客さんで面白かったのはパンをもらい歩くクマさんみたいなお兄さん。隣の年配の女性からパンを分けてもらって、それでも足りず地元の男性メンバーのテーブルにももらいに行っていた。すごく面白い。このクマさん、ドイツ人でウーディネ在住みたい。私たちの隣に座った若いドイツ人カップルがメニューを理解できず困っていたら通訳を買って出た。いいヤツなんだ。パン好きにも悪いヤツはいない(笑)そんな風にお店も働いている人もお客さんも、ちょっと変わっていてすごく楽しかった。お料理の味も抜群。なんだかすごく楽しくなって鼻歌なんか出そうになる。あまりに濃い時間を過したのでほとんど観光もせずにウーディネを後にする。でもきっとずっと忘れないと思う街。

夕食は GASTRONOMIA DANESIN(とても良い食材店。スタッフもプロフェッショナル!)でプロシュットやお総菜、そしてプロセッコを買ってホテルで。こういうのも楽しい。明日はいよいよ東の果てトリエステ Triesteへ。そうそう忘れた傘はIL BASILISCOの方がホテルに届けてくれた。感謝!忘れず電話をして良かった。+つづく


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