●6月20日(火)ラヴェッロのホテルを9時30分にチェックアウトし、マテーラ(Matera)へ向かう。初めての州・バジリカータへ突入である。アマルフィ海岸沿いを南下しヴィエトリから高速へ入る。途中ポテンツァで高速が終わるので、その後は一般道をひたすらイオニオ海方面へ。高速・一般道共に空いていて、ドライブは快調。昼過ぎマテーラへ到着。ここは洞窟住居群サッシ(Sassi)で有名。手元の資料にはネガティブなことしか書いてない。市街地は普通の町に見えるけど、いったいどんなところなんだろう。暗い気持ちになるのはいやだなぁ。ホテルを見つけてチェックインしたらさっそくサッシを歩いてみよう。

●中心からはやや外れたホテル、Del Campoへ荷物を置いて、町へ戻りバールで遅い昼食を取る。そしていよいよサッシ地区へ。う〜ん。なんて言えばいいんだろう。初めて見る光景。これがサッシかぁ。
マテーラの市街地は高いところにあり、サッシはグラヴィーナ渓谷と言うすり鉢状になったところにあるので、上から見下ろすように一望できる。真っ青な空と乾いた空気、灼熱のと言っていいほど強烈な太陽。どこかアフリカを思わせる(と言っても行ったことないけれど・笑)。とにかく探検! 中へ入って歩いてみよう。すると、ところどころに観光のポイントがあってその前を通りかかると、どこからともなく人(ガイド)がやってきて説明してくれる。(案内してもらったら心付けを渡そう。)

Photo: E. Sugawara

●教会などを見ながら、ぶらぶらとサッシを歩いていたら「Sassi Hotel」を発見。サッシを改造したホテルのようだ。すでに宿は決めてしまったけれど、参考までに中をみせてもらうことに。宿のオーナーSig. Raffaeleが話し好きの世話好きで色々説明してくれる。部屋も雰囲気があってすてき。外はめちゃくちゃ暑いのに、中はひんやり。洞窟住居ってのは生活の知恵なんだ。どうしてもここに泊まりたくなった私たちは、チェックインしたホテルを一泊に変更してもらい、次の日移動することにした。見せてもらったスィートは、残念ながら埋まっていたけれど、小さいながらも快適な部屋を借りられた。窓からはサッシが一望できる。なんだかすごく嬉しいぞ。これも旅の出会い、縁だよね。

●何もかもうまくいって楽しい旅だと思った矢先、大アクシデントが。なんとドライバーが高熱を出した。運転の疲れが一気に出たのか、それともサッシの灼熱の太陽にやられたのか。解熱剤を飲んで熱が下がり始め、落ち着いたようなので友人達を残し、夕方マテーラの町へ散歩に出た。幾つかの戦利品を手にホテルへ戻ると、部屋の前に友人が。なんと、外出していた間に熱がどんどん上がり、大騒ぎになっていた。看病する友人はイタリア語ができない。ホテルの人はほとんどがイタリア語しかわからない。マンマミ〜ア!
なんてこったい。こういうときにこそ、長年習っているイタリア語が真に役立つはずなのに。

友人は、まず冷やす為にアイスをもらおうと思った。
(そのとき私は脳天気にアイスを食べていた。)


●それがどうにも通じない。四苦八苦しているところにシニョーレの息子ロベルトが戻ってきた。彼は英語が出来る。すぐに友人のドクターを呼んでくれた。ロベルトが薬も買いに行ってくれ、ドクターの診察も終わり(なんとお金は取らなかった)、嵐が過ぎ去ったところへ、私がのこのこと戻って来たらしい。それにしても、高熱を出したドライバーには申し訳ないけれど、そのアクシデントの為に南イタリアの、マテーラの人たちの親切に巡り会い、忘れられない町になった。正直来る前は、ガイドブックにあまり良い話が書いてなかったので、予定を変更してスキップしても良いとさえ思っていたマテーラ。今こうやって想い出しても、人々の温かで穏やかな親切が胸に浸みる。訪れて本当によかった。また一つ旅の宝物ができた。