古い物が大好きである。亡くなった父の影響もあるのだろう。そう言えば、良く「田舎暮らし」という情報誌を読んでいたなぁ。私の実家(山梨県都留市)だって十分田舎なんだけど(笑)。そしてあるとき、大分の田舎で民家に暮らすと言い始めて周囲を驚かしたっけ。そんな父のDNAを持つ私も、いつか自分で家を造ることがあったら古い民家を移築したいと思っている。それは叶わぬ夢かも知れないが、まずは普段から情報収集をと思い民家を保存・再生・リサイクルするための全国規模ボランティア団体「日本民家再生リサイクル協会(JMRA)」の友の会会員になっている。定期的に情報誌が届き、民家現地見学会などへ参加できる。

勤労感謝の今日11月23日初めて見学会へ参加した。場所は東京浅草にある料亭「多満喜」。戦災で消失した後、再建された浅草花柳界内の料亭で、当代女将は浄瑠璃清元節の教授方、なんと御年91才。6歳の6月6日(この日から習い事を始めると大成すると言われているそうです)より長唄20余年、清元60年余の芸歴と言うからすごい。そのせいか、背筋がぴんと伸びて本当に若々しい。料亭は昨年50周年を迎えたそうだが、今はすでに店じまいをしており、若女将との住まいを残して後は解体することになった。その改修工事を請け負っている地元の業者さんがJMRAのメンバーで、本日の見学会と相成った訳である。希望者は丸ごと、もしくは部分的に部材の譲り受けができる。かかる費用は解体費用、移築場所までの搬送費用それから民家バンク利用料。もらい手がなければ廃材になるだけなので、こうやって古い物を残して行くのは良い考えだと思う。それにしても、取り壊される古い建物や民家が後を絶たない。今回も解体された跡地は駐車場になるという。寂しい限りである。JMRA民家バンク情報には築100年200年を越えた民家がもらい手を探している。見つからなければ風雪にさらせれて生き残ってきた建物も重機で無惨に取り壊されるのである。それぞれ事情はあるだろう。寒くて暗い古民家が現代の生活様式に合わなくなている面もあろう。維持管理が手に負えなくなっているのかもしれない。しかし、高すぎる日本の相続税もこういった現状を生み出している一つの大きな原因ではないだろうか。お上はお金を取ることばかり考えずに、二度と再生出来ない長い年月が培った、日本の美しいものを保存することに力を尽くして欲しい。今のニッポンはあまりに悲しいじゃありませんか。そんなわけで、私も日本の良い物を暮らしに活かす個人キャンペーンやってます。まだの方はぜひ(笑)!

そうそう、本題の建物見学も面白かったけれど、女将の話がこれまた面白かった。そんな女将の若さを保つ秘訣は心配事をしない、のんきなことだそうです。流石江戸っ子、明日の心配なんぞしたことないそうです。たとえ明日のお金がなくてもなんとかなるさと。それと頭を使うことでしょう。お稽古ごとの話を伺っていても、今の詰め込み式丸暗記教育と違って、自分の頭で考える。創造させるということが出来ていたように思います。家庭のしつけと、学校教育も考え直さなきゃいけませんね。いろいろ考えさせられる初冬の一日でした。