●葛籠・つづら(岩井良一作)

人形町は甘酒横町にある葛籠屋さんで大小二つのつづらを作った。一つは半紙が入る大きさでもう一つは畳紙に入れた帯が入る大きさ。特注サイズで作った訳では無いけれどそれぞれに丁度良い寸法なので半紙と帯を入れている。半紙サイズのものは中に仕切りがついていてとても便利。本体には普通家紋と名前を入れるようだが、私は自分でデザインした紋だけ入れた。塗りの色は黒(真塗)、茶(溜塗)、朱の三色。紋の色は朱か金を選べる。今回は黒の本体に紋を金で入れた。紋はフリーハンドで描くのかと思ったら型紙を作るのだそうだ。


それらをすべてたった一人の職人さんがこなしている。だから制作日数もそれなりにかかる。昨年の一月半ば頃にお願いして出来上がったのは12月。でも待った甲斐あり。収納ケースとして優れているだけではなく見た目もとても素敵。初めの内こそ塗料で目がちかちかしたけれど、作って良かった。大満足のつづらなのです。欲を言えば、カシューではなく漆のものを作ってくださるともっと嬉しい。

●鉄瓶・てつびん(釜師 根来実三作)

ずっと欲しいと思っていた鉄瓶をとうとう買った。お茶の先生と出かけた骨董市で「これだ!」と言う物に出会った。無骨な感じの物が本来は好きなのだけれど、これは華奢なフォルム。取っ手のデザインが特に気に入っている。胴には鳥と笹。


この鉄瓶を電気式の風炉にかけ毎日お湯を沸かしている。炭にはかなわないが、それでも十分風情はある。それになにより暖かい。蒸気も出るから乾燥対策にもなって一石二鳥。畳はお茶のお稽古にと以前購入していた物。風炉もだいぶ前に父から譲られたものだ。そうやって仕舞われていた道具も毎日使われて嬉しそうである。鉄瓶でゆっくり沸かされたお湯は丸くてとても美味しい。

冬の寒い日しゅんしゅんと沸くお湯の音をきいていると、なんとも幸せな気分なのである。