大洲城下町(2025.09.29 Mon.)

昨夕白隠フォーラム終了後、バスにて大洲市まで移動。タイミングよく「宇和島-道後・松山(急行・特急)」という宇和島バスがあり、会場近くの西予市役所前から乗車し大洲市内の「大洲本町」というバス停で降車。そこから宿泊先のフロント棟まで歩き、無事にチェックイン。参加したツアーに大洲が組み込まれていたので、勝手知ったる、で憂いなし。城下町全体に宿泊棟が点在している。このホテルのことはずいぶん前になるが、雑誌で知った。大洲ではないけれど、同じような城下町、丹波篠山のホテルで知ったのである。“空き家になってしまった建物を改修し、複数の客室が町中に散らばる分散型のホテル”というコンセプト。丹波篠山はその構想を初めて形にした場所らしい。いつか行ってみたいと思いながら時はながれ、場所を変えて大洲で実現した。今回私たちが宿泊したのは“大洲の文化を支えた(木蝋の)職人たちが過ごした長屋”の一室。お任せのコンフォートツインプランから割り当てられた部屋(どのお部屋とカテゴリー内の中からリクエストもできる)。フロント棟から至近で、とても便利なロケーション。二階建ての長屋の広さも十分。元の雰囲気を壊さず、バスルームなどは広々と取ってあり、快適でした。フロント棟が経営者の住居で、裏に作業場があり、その作業場の近くに職人たちの住まい(長屋)があった。部屋の区割りは当時のままだと思われるので、職人さんの住居スペース、なかなか広い。木蝋産業で江戸後期から明治期は大いに栄えていたそうだから、職人さんの待遇も良かったものと窺える。

昨夜はホテルのレストランで食事。こちらも趣のある建物。今朝の朝食場所もまた違った棟で。食事を終えてまず臥龍山荘へ。庭の奥にある「不老庵」は茅葺き屋根の修繕工事中で拝見できず残念でしたが、それ以外の場所をゆっくりと見てまわる。事前勉強もせずにうかがったので「霞月の間」*ではなんでこんなところにお軸を掛けているのだろう、と不思議に思った。こちらの心持ちを見透かしたかのようなタイミングでスタッフの男性が声をかけてくれ、説明してくださった。なるほど、そういうことか! ちょっとやりすぎでは、と思わなくもないところもありましたが(笑)構想10年、工期4年、木蝋貿易で財を成した河内寅次郎がその情熱を傾けた数寄屋建築を堪能。スタッフのお話だと、60年前にお茶会でこちらに来たことがある、という女性が先日お出ましになった、とのこと。いつ頃までお茶室として使われていたのでしょうか。茶湯をかじるものとして大いに気になるところであります。

*メモ:天井の和紙は元々美濃和紙が貼られていたのを地元の大洲和紙に変えている

午後からは、大洲城へ。途中で目に留まったお店「まちなか珈琲焙煎所」**さんでコーヒーブレイク。こちらのご店主から「奇跡的に木造で」(平成16年に竣工、復元された大洲城)の「奇跡的」の意味を教えてもらった。なるほど、そういうことか! とまた膝を打つ。先日ツアーで大津を訪れたときは、再建されたお城だからと遠くから眺めて満足しておりましたが、登城してよかった。復元、ものすごい気合の入り方です。寄付者の一覧、個人のお名前で一億三千六百万円の方が。ひゃ〜、すごいすごい。今日は季節外れの蒸し暑さ。そんな中、お城の天守と櫓に登れば涼しい風が吹いて、眺めも良く気持ちいい。宿泊はしませんが(笑)十分に堪能して、下城。

大州の城下町をほぼくまなく楽しんで、帰路につく。予約している岡山からの新幹線に間に合うよう逆算した列車に乗る。伊予大洲駅で下り列車の一部にキャンセルが出ているこを知った(踏切内で事故があったとか)。我々が乗る上りではなくてよかったと安堵。予讃線を松山で乗り換えて岡山へ向かう。後は岡山から新幹線で京都にとのんびりした心持ちで座っていると「この列車は行き先変更になりました。途中の新居浜まで」と車内アナウンス。えっ! なんですって!! ここはイタリアか(苦笑)確かに先のアナウンスで踏切内の事故により行き先が変更になるかも、と言っていたような。しかし同日に上下線で同じようなことが起こるとは夢にも思わず。だって、ここはニッポン!! どうすればいいのか、という説明もなくしれっと行き先変更だけを告げるアナウンス。通りかかった車掌に「岡山まで行って新幹線に乗らなくてはならない」と話しかけたら「この列車は岡山へは行きません」だって。そんなことは分かってるわよ。分かってるから善後策をお尋ねしようと呼び止めたんじゃない。「申し訳ない」の一言もなく、と私はすっかりお冠。手前の伊予西条で下りが折り返し運転をする、という説明はあったので、伊予西条で降りて窓口に並び1時間遅れの特急の席へ振り替えてもらう。前のおばさまはなんと小田原まで。今日中に移動できるかどうか非常に気を揉んでいらっしゃった。小田原は遠い。そして同じように車内アナウンスに腹を立てていた。二人で「ですよねぇ」と言い合って、溜飲が下がる。この方、駅員さんと少しやりとりをした後、決め兼ねていたご様子でしたが、窓口長蛇の列を見て、少し考えてみますと最後尾に移動された。こういう気遣いがJR四国の方々にも欲しいのよっと声に出さず叫ぶ。無事小田原に本日中に移動できますように。

最後に少しトラブルがあったけれど、伊予の旅自体はまことに楽しいもので、実りも多く充実した3泊4日でありました。

**こちらでコーヒーと共にいただいた「山栄堂さんのシューサブレ」クリームの美味しさにノックアウト。そしてそのお値段!! 和菓子屋さんでもあるので大洲名物「志ぐれ」をお土産に購入