松風は江戸より(2022.02.01 Tue.)

先月東京の友人からお菓子が届いた。開けてみると松風とある。お江戸にも松風が。それにしては軽い。お箱を開けて驚いた!なんだこれは!?同封のハガキを読んでさらに驚愕。昨年の2月に注文した品とある。なんと約一年!これは心していただかなくては。機をうかがい、旧暦元旦の本日、炭を起こし湯を沸かし薄茶を点て、頂戴しました。見事な造形美。割るのがもったいないようです。しかし心を決めえいやっと拳を振り下ろす(笑)お味も見事。

希少なお菓子を届けてくれた友人に心からの感謝を!麗しい手仕事を知る旧暦元旦となりました。

雪夜書千巻(2021.12.19 Sun.)

ダスティミラー本日出会った一行。許渾*の詩で花時酒一瓢、と続くらしい。こんな風に過ごしたい(笑)今年は“炭と仲良く”と積極的に炭のお稽古にも挑戦。結果は… まだまだ疎遠(笑)来たる年も引き続き同じテーマで。

写真は道すがらの一枚。葉に雪が積もったような風情。ダスティミラー(別名白妙菊/シロタエギク)と言うそうだ。

*中国,晩唐の詩人。潤州丹陽 (江蘇省鎮江) の人。字,用晦 (ようかい) 。太和6 (832) 年進士に及第。病弱のため一時退官したが,のち潤州司馬,監察御史 (849) ,虞部員外郎,睦州 (浙江省) ,郢州 (湖北省) の刺史を歴任。晩年は潤州の丁卯澗 (ていぼうかん) の別荘に隠棲したので,詩集を『丁卯集』といい,詩風を「丁卯体」と呼ぶことがある。穏やかな詩境を巧みにまとめた詩が多い一面,慷慨悲歌の格調をもち,特に懐古の情を述べた律詩に佳編がある。(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典より)

灯心会40周年記念茶会(2021.11.23 Tue.)

昨日の荒れたお天気が一転、気持ち良く青空が広がった勤労感謝の日。ぴりっとした空気の中、水無瀬神宮を目指す。重要文化財「灯心亭」茶室を保存するために発足された「灯心会」の40周年記念茶会へ寄せていただいた。お濃茶席とお薄席、そして点心席もあり。お席でご一緒になった方が「点心付きのお茶会なんて本当に久しぶり」としみじみとそして笑顔で話されていた。本当に!時節柄、濃茶は各服点て。各服で点てるのは難しくお稽古でも四苦八苦している。しかし本日のお濃茶は各服点てにもかかわらず、見事なもので心から美味しくいただきました。二条駿河屋さんの「相生きんとん」もまことに美味。池下先生のお手前も眼福でございました。お道具もしかり。(一席の人数を少なくしてしているため、一席当たりの時間は通常よりも短いものの)お正客様が上手にお話を引き出してくださり、お道具の謂れなどもよく理解でき、ゆったりと感じられる。お薄席は古曽部焼窯元。流儀の違いもありがらっと趣が変わる。窯元のお話も興味深く、こちらもまた楽しいお席。窯元は“永樂保全の研究にも熱心で著書も出版されている”と何かで拝見した。本日のお席、お正客の菓子鉢はその永楽保全。状態もよくすばらしいお器でした。その後、三友居さんのお点心を、照り葉の下でおいしくいただき、記念品*も受け取って終了。「灯心亭」を見学してお参りを済ませ帰路に着く。少しづつ常の姿に戻りつつあるお茶の世界ですが、まだまだ油断できず、ご準備や当日の差配にも一層のご苦心があったことと拝察申し上げます。そんな中、すばらしい時間を過ごさせていただき、まことにありがとうございました。

*水無瀬神宮の敷地の土も使われているお花入。お作は古曽部焼窯元寒川義崇氏

醍醐寺(2021.11.10 Wed.)

ビッグネーム。そしてさほど遠くない。されどまだ一度も訪れたことがない。それでは良い機会なのでとお献茶式にエントリーして初めて伺う。金堂*(国宝)でのお献茶。表千家家元・猶有斎宗匠のご奉仕。終了後に純浄観**(重要文化財)での拝服席/不審菴と白書院(重要文化財)での副席/同門会京都支部。純浄観のお席ではこちらまで赤く染まりそうな設え。白書院のおもてなしも心に残りました。時節柄人数を抑えての挙行。おかげさまでゆったりと楽しむことができました。お席を辞した後は、せっかくだからとお献茶式でお隣になった方とお庭や他のお部屋を見学。

今月、11月27(土)~29日(月)の三日間は国宝・五重塔特別拝観。弘法大師空海の肖像画が24年ぶりに公開される。初日の27日(土)には弘法大師諡号下賜1100年慶讃法要も行われるとのご案内。「遺跡」ではなく、今に息づいているのはすごいことだと改めて思う。まさに悠久の歴史。

●醍醐寺:真言宗醍醐派の総本山。山号、深雪山。874年勅願により聖宝(しようぼう)が開山。907年醍醐天皇の勅願寺となり、次々に堂舎が建てられた。1470年応仁の乱で大部分の堂宇を焼失。慶長年間(1596〜1615)豊臣秀吉の帰依をうけ、義演が再興。創建当時の遺構である五重塔をはじめ国宝多数。山上の醍醐の准胝堂は西国第十一番札所。(以上“スーパー大辞林”より抜粋 なお准胝堂は平成20年8月の落雷による火災によりお堂が焼失)

*金堂:薬師三尊像(中央:薬師如来/御本尊 脇侍:日光・月光菩薩)奉安
**純浄観:太閤秀吉の醍醐の花見(@槍山)の建物を移築したものと言われている。襖絵の桜・紅葉は、浜田泰介氏により平成に入ってから描かれた

水無瀬神宮お献茶式(2021.10.14 Thu.)

久方振りにお献茶式へ参列。中止ばかりの文字が並んでいたお茶関係の行事もようやく再スタート。お人を入れての初めての再開の今日、人数をずいぶんと絞り規模を縮小して。そのため例年のJR大山駅からのタクシー送迎はなく、最寄の水瀬駅から車に乗る。運転手さんが「お茶会?それにしては人が少ないね。以前はすごい数の人を乗せたものだけど」と。少しづつ、でも着実に常の生活が戻るといいと思う。でも、どこもかしこも人だらけ、というのはちょっと。痛い思いをしても結局元の木阿弥では。今こそ「知足」を心に留めたい。

お献茶は而妙斎宗旦宗匠のご奉仕。お献茶の後、拝服席と副席。燈心会副席の寄付きと本席のお軸はそれぞれ「好日」と「松菊萬年歓」。しみじみとお軸の語が心に染み渡る秋の一日となりました。

京都市内に戻り、KYOTOGRAPHIE二条城会場の展示を見る。展示内容は下記。
4 リシャール・コラス|二条城 東南隅櫓
5 片桐功敦|二条城 二の丸御殿 台所
6 ダミアン・ジャレ & JR|二条城 二の丸御殿 台所
7 小原一真|二条城 二の丸御殿 台所・御清所
8 四代田辺竹雲斎|二条城 二の丸御殿 御清所
以上の内、ダミアン・ジャレ&JR展映像作品「Brise-lames」は感染対策のため鑑賞人数に制限があり整理券が必要で、可能な時間が少し遅かったため、諦める。どの展示も大いに心揺さぶられたが、片桐功敦氏の「Sacrifice」の写真作品に特に引きつけられた。静かな、でも大きな衝撃。見えないものを見る眼を、聞こえない声を聞く耳を、そして考えることを決して諦めない心を、養っていきたい。