体験学習@奈良 午後の部(2015.03.30 Mon.)

「にぎり墨」体験の次は染色家の中井由希子さんの工房で「ロウケツ染」ワークショップ。姉は確か中学生のとき美術の授業でロウケツ染をしていたけれど、私のときはなかった。絞り染や友禅の体験はありますが、ロウケツ染は初めて。楽しみです。でも不器用だからちょっと不安(笑)

工房でロウケツ染についてご説明があった後、さっそく実習。限られた時間なので、蝋で絵を描き、一度色をのせる、という一番シンプルな作業過程で。ハンカチかパネルかを選択。手ぬぐい派でハンカチは使わないので、パネルに。何も考えてこなかったのでその場で即興的に図案を練る。

その結果、できたのが写真の作品。参加者の中で一番最初にでき上がる。下絵もなしだしね。早いだけが取り柄です(笑)この後中井さんが仕上げてくださり手元に届く。さて、飾ってもよいと思えるものが届くでしょうか。どきどきです。

一度体験すると、もっとああすればよかった、ここはもうちょっと、と分かることも欲も出る。とにもかくにも「体験」は「理解」に繋がり、その理解は「愛」に発展するので楽しい。これからはロウケツ染を見る目も違って来るに違いない。

中井さんの工房には提供しているご自身の布で作られたmatohuさんの作品なども飾られていた。すてきすてき!映画監督の河瀬直美さんのカンヌでの衣装も中井さんのお作品とのこと。YouTubeで拝見しましたが、こちらも素敵でした。素材がモスリンなので、シルエットがとてもきれい(体験に使われていたのは木綿)。ますますのご活躍が楽しみな方です。

それにしても楽しい一日となりました。企画してくださった書の先生に感謝です!

体験学習@奈良 午前の部(2015.03.30 Mon.)

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書の先生プレゼンツ、古梅園さん見学と「にぎり墨」体験&「ロウケツ染」体験、という贅沢な大人の体験学習の一日。近鉄を利用して奈良まで。JR組の先生たちと合流してまずは古梅園さんへ。こちらの佇まいを拝見しただけでテンションが一気に上がる。ステキスギ!

油煙墨の制作過程を順を追って見学。古梅園さんは最初から最後まで手作業。廉価な墨も高いものも作業は一緒。すべての工程を手作業で行っているところはもうこちらだけらしい。ケミカルなものが一切入らない墨作りは寒い時期だけに行われる。基本的には11月から4月いっぱい。ただしその間は毎日が重労働。さて、墨が作られるまでをざっとおさらい。

植物性油脂(現在は主に菜種油)を燃やして煤をとり、その煤を膠と混ぜて練り、木型(梨の木)で成形し、木灰に入れて約7割の水分を抜き、最後は吊るして自然乾燥させる。

もう少し詳しく記しておこう。

A 採煙:「油煙だき」と呼ばれるこの作業は、土蔵づくりの棟で行われる。かわらけ(土器)に油を入れいぐさの灯芯で燃やし、ハンドルのついたかわらけ『どうき』をかぶせ、その内側についた煤煙をとる。部屋に入ると真っ暗な中に炎がずらっと並び圧巻。一部屋に100個。同じ炎に保つため職人がたえず炎の加減に注意をはらい、1時間ごとに油を追加、15分ごとにハンドルつきかわらけを回して、均等に煤がつくように配慮する。そして2時間後、『どうき』の裏についた煤を羽ではき落として採取。これ日に4回繰り返す。

B 膠:煤と共に大切な材料の膠。壺(古いものは銅製、新しいものはステンレスだったか)に水と膠を入れ、70度程度のお湯で湯煎。

C 煤と膠ができたら「もみ」と呼ばれる作業。煤と膠を手でよく混ぜ合わせて練り、足でもむ。*もみ終わったものを職人さんはお尻に敷いていました

D もみ上がった墨は香りがつけられた後、木型(梨と決まっているそうだ)に入れられ成形。

E 木型から取り出された墨は、木灰に埋められ乾燥。一日目は水分の多い木灰、二日目以降は少しずつ水分の少ない木灰に埋め替えられる。小さいもので一週間、大きいもので30日から40日。この作業で約7割の水分が除かれる。その後、藁で編んで天井から吊るされ(黒い高野豆腐の様)室内で約半月から3ヶ月から自然乾燥させる。

F 乾燥が終わった墨は表面に付着した灰などを落とすため水洗い。艶を出すものは蛤の貝殻で磨かれる。

この日は三人の職人さんがEの作業をされていた。その工程をお聞きしてからその場所で”はい、にぎってみましょう“といきなり「にぎり墨」体験が行われた。へっ!?今ここで??とちょっと慌てふためく参加者一同(笑)中から職人さんが棒状の墨を手渡してくれる。それを利き手でぎゅっと強く握りしめて飛び出した墨を親指でぐっと押す。手が黒くなるかと思いきやほとんどまったくと言っていいほど、ならない。細かい質のいい煤だからだそうだ。今日は4千円と5千円の墨が作られていて、せっかくだからと全員5千円のグレード。生暖かい棒状の墨をぎゅっと握り混む作業はあっという間だったけれど、不思議な感触でとても楽しかった。握った墨は乾燥の工程を経て送られてくる。届くのが楽しみだ。

墨作りの職人になりたいと希望する若い人は意外に結構あるようですが、過酷な作業にほとんど続かないそうです。確かに「もみ」の作業ひとつ取っても非常に大変そうだ。この工程を他所では機械化しているようですが、機械で練ったものは均一過ぎて面白みにかける墨になるとか。もちろん考え方は色々あると思うけれど、たとえて言えば、機械織りの反物と手織りの反物の違いか。

墨作りを理解してからお買い物。いっそう墨が尊く思える。ほとんどが牛の膠を使用しているそうですが、山羊や鹿など他の動物の膠のものも。私は山羊の膠で作られた墨を購入。牛より膠がさらりとしていて仮名書きに向いている、というご説明でした。その違いが私にわかるかどうかは置いといて、チーズもシェーブル好きだから(笑)

「削り墨」という木型で固めるときに出る、いわゆる“バリ”の部分を袋詰めにした商品も。この「削り墨」という存在も初めて知る。主な需要は提灯屋さんだとか。「墨」を書道のものとしてだけではなく、素材の一つ、と位置づければもっと需要が広がるのではないだろうか。墨の美しさを、もっともっと多くの人に知ってもらいたい。そして墨作りの火が絶やされないことを切に願う。私も今まで以上に墨を大事に、そしてたくさん使おうと決意する。

お昼をはさんで午後は「ロウケツ染」ワークショップ。まさに大人の体験学習!+つづく+

白隠フォーラム in 東京 (2015.01.25 Sun.)

佐藤先生サイン

2015年1月24日(土)新宿の紀伊国屋ホールにて開催。芳澤勝弘先生(花園大学 国際禅学研究所教授)のご講演はもとより、今回楽しみにしていたのは宇宙物理学の佐藤勝彦先生(自然科学研究機構機構長・東京大学名誉教授)のお話。

佐藤先生のお話は、佐々木閑先生(花園大学文学部仏教学科教授)とのトークショーという形式で、佐藤先生のお話の合間合間に佐々木先生がご質問やフォローをしてくださった。佐藤先生は、難しいお話を優しい声のトーンで、しかも易しくお話になる。それに加えて佐々木先生のフォローも的確で、物理音痴、科学音痴の私にも大いに楽しめる内容だった。

以下覚え書き(芳澤先生の資料より抜粋)個人的補足あり:

「万方帰一」と白隠 芳澤勝弘
 ●宇宙 
  ・雲門文偃(うんもんぶんえん/864〜949)禅師「乾坤の内、宇宙の間、中に一宝有り、形山(ぎょうざん)に秘在す。」
   僧肇(そうじょう/384〜414)の『宝蔵論』「広照空有品第一」からの引用
  ・『祖庭事苑』宇宙、「天地の四方を宇と曰う。古往今来を、宙と曰う。」
 ●白隠の圓相は少ないがその内の一点 十方無虚空、大地無寸土(十方、虚空無く、大地、寸土無し)「八重葎(やえむぐら)」
 ●圜悟克勤(えんごこくごん/1063〜1135)『碧巌録』四十五則「趙州万法帰一(じょうしゅうまんぼうきいち」の公案、
  白隠は『荊叢毒蘂(けんそうどくずい』の中でこの公案について述べている。
 ●メビウスの環
 ●三人の童子 白隠禅画における童子は衆生の象徴。
 ●四弘誓願文
 1.衆生無辺誓願度 しゅじょうむへんせいがんど   たくさんの人が幸せになれるように勤める
 2.煩悩無尽誓願断 ぼんのうむじんせいがんだん   尽きる事のない煩悩を無くす
 3.法門無量誓願学 ほうもんむりょうせいがんがく  壮大なお釈迦様の教えをすべて学ぶ
 4.仏道無上誓願成 ぶつどうむじょうせいがんじょう 最上の悟りを得て仏様と同レベルに達する
 
 これを白隠は以下の様に説いている:

 『八重葎』巻の三
 若し人、無上の仏道を成就せんと欲せば
 先ずすべからく無尽の煩悩を截断すべし
 煩悩を截断せんと欲せば、先ずすべからく誓って常に無辺の衆生を利済すべし  
 衆生を利済せんと欲せば、先ずすべからく常に勤めて大法施を行ずべし。若し人、法施を行ぜんと欲せば、先ずすべからく三経五論、普く内典外典に入り、伝記百家の書を捜索して、広く大法財を聚むべし。是の故に法門無量誓願学と言う。
  さらに言う、
 若し人誓願成を得んと欲せば、先ずすべからく誓願度を行ずべし。誓願度を行ぜんと欲せば、誓願学を勤むべし。その中、覚えず誓願断に至る。
 
 つまり下記の順序

 3.法門無量誓願学 ほうもんむりょうせいがんがく  
 1.衆生無辺誓願度 しゅじょうむへんせいがんど    
 2.煩悩無尽誓願断 ぼんのうむじんせいがんだん   
 4.仏道無上誓願成 ぶつどうむじょうせいがんじょう 

 なるほど、これなら出来るかも!
 
●「仏説箭喩経(ぶっせつせんゆきょう)」(毒矢のたとえ)
 (前略)涅槃に至るためには無益な質問であり、捨て置いて答えないということを持って答えとした。

●上求菩提と下化衆生(じょうくぼだいとげけしゅじょう)
 禅は己事究明
 「自分は何者か」→「自分は何をすべきか」
 『荊叢毒蘂(けんそうどくずい』(原漢文)
 “虚空もなければ大地もない。ただ清浄円明なる大円鏡の光が輝きわたっている。何にたとえようもない。そのような境地を、第九清浄職という。しかし、そういう境界が悟りだと思って、それを後生大事に死守しているならば、それは気をつけねばならぬ落とし穴である。そのようなところに安住し、腰を落ち着けずに、さらに四弘誓願を永遠に実践して、一切の衆生の利益してゆく者を、大乗円頓の菩薩という。これこそが真の仏弟子というものである。”

以下トークショーメモ及び後日補足、「宇宙はこうして誕生した」(佐藤勝彦編著/ウエッジ選書)参照:

佐藤勝彦・佐々木閑トークショー

・宇宙には始まりがあったか
 聖書の創世記、古事記などで語られてきた。ヒンズーのシヴァ神はブラフマー・ヴィシュヌ・シヴァの三神一体=トリムールイ。右手に持った小太鼓で宇宙の創世を奏で、もう二本の手で宇宙を維持し、さらに火炎を持ったもう一本の手で宇宙を破壊する。
・天の川銀河は2,000億個の星の集まり。一番近いアンドロメダ銀河は230万光年離れている。宇宙は1,000億個の星の集まりである銀河で成り立っている
・「ビッグバン理論」ジョージ・ガモフ、マイクロ波が発見され理論が立証
 アインシュタインの相対性理論、ハッブルの膨張宇宙の発見、ガモフの予言したマイクロ波の発見=ビッグバン理論の確立。宇宙のスタンダードモデル
・「無からの宇宙創世」アレキサンダー・ビレンケン
・「インフレーション理論」1981年に佐藤先生が「指数関数的膨張モデル」(「真空の相転移」=「宇宙の創世」から「ビッグバンに至るまでの一瞬の異常膨張のシナリオ)を提唱、半年後アラン・グースによって同様のシナリオが「インフレーション理論」として発表され、その後、この名称が一般的になる
・宇宙は「無」=「真空」(真空のエネルギー、真空は空っぽではなくて“ゆらぎ”が存在)から生まれた。真空の状態はエネルギーの高い状態。空間は互いに押し合い急膨張、そしビッグバンに繋がる
・「真空の相転移」南部陽一郎
・宇宙の多重発生「マルチバース multiverse」
・ニールス・ボーア@コペンハーゲン 量子論の生みの親
・遠くを観測すれば過去が見える
・宇宙を構成している物質・エネルギーの96%は正体不明、暗黒物質・暗黒エネルギー
・「我ら何処より来るや 我ら何者なるや 我ら何処へ去らんとするや」 ポール・ゴーギャン

乞巧奠@冷泉家 2006 (2014.06.24 Tue.)

2006年8月27日(日)に冷泉家の乞巧奠を拝見した。そのときの日記を転記。文章は当時のまま。

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最近入ったばかりのお茶花のお教室で予てより計画の冷泉家の乞巧奠。お一人うかがえない方が出たので私に 権利が回ってきた。棚からぼたもちで良い経験をさせていただく。

冷泉家に伝わる乞巧奠では牽牛・織女の二星に供物をし、 蹴鞠、雅楽、和歌などを手向けて、技が巧みになるよう祈る七夕の儀式。「星の座」は庭に設けられた祭壇。写真では何度か見ているけれど、冷泉家さんの実物を拝見するのは初めて。

この日かなり強い夕立があったので中だが本来はお庭に設える。 四脚の机の周囲に九本の灯台。後に二本の笹。笹の間には 梶の葉と糸を吊るした緒を張る。机上には、星に貸すため、琴・琵琶などの楽器を置き、食物、五色の布・糸、秋の七草を供える。最前列に角盥に水を張り、一葉の梶を浮かべる。この水にニ星を映して見る。

お供えの種類や配列を覚えるため、次のような和歌が伝えられているとのこと。さすがお歌の家。

 うりなすび ももなし からのさかずきに
 ささげ らんかず* むしあわび たい
 *らんかず(蘭花豆):フライビーンズ

儀式は午後陽の高いうちから手向けの蹴鞠で始まるようですが (実際に今も蹴鞠をしているのでしょうか?)私たちが 拝見したのは日没から始まる「雅楽」からでした。その後に「披講」(和歌を朗詠すること)と「流れの座」(当座の歌会)。「流れの座」は今で言う合コン?(笑)男女が向かいあって座り(このときは5対5)その場で各人別々の歌の題を 取りに行き、硯(重硯)と紙が配られ準備を整える。やがて男女の間には天の川に見立てた白布が敷かれ、牽牛と織女に擬された男女は歌を読み、扇に載せて交換し、「かえし」(返歌)を読んでまた交換。当時は翌朝鶏の声を聞くまで歌会を楽しんだようです。

この間約二時間。雅な昔にタイムスリップし、お公家さんの生活を垣間見ることができ、たいへん有意義でした。名のある家の歴史を文化を、今の世に残して行くことは容易なことではないと思います。でもどうか これからも引き継がれ後世に残って行きますように。(そのためには私も「友の会」へ入るべきか..)

花とリトルヤブキリ (2014.04.24 Thu.)

昆虫好きのやぎを真似して私も撮ってみました。「マーガレットコスモスとリトルヤブキリ」そして「シャガとリトルヤブキリ」。

で、ヤブキリってどんな昆虫?漢字で書くと「藪螽斯」。ひゃ〜、むずかしい。「バッタ目キリギリス科」。キリギリスとどう違うの?「羽をのぞいた体長はより小さめ、後肢も短めで、樹上生活に適応したコンパクトな体型である。」(以上ウィキペディア)らしい。ふむふむ。幼虫のときはどうやって見分けるのかな?「オスの幼虫は背中の褐色の線が一本であることでキリギリスと区別できる」(以上ウィキペディア)のだそうだ。確かに写真のものは一本ですな。だからヤブキリの幼虫とわかるのね。

今までは何を見てもキリギリスと思っていましたよ(笑)勉強になりました。忘れないようにしよう。