“茶碗の中の宇宙” (2017.02.07 Tue.)

樂家一子相伝の芸術 をようやく見る。日曜日午後に思い立って出かけたらちょうど対談(ゲストはアーティストのJulie Brook氏)が始まる時間で、まだ席に余裕があったので拝聴することにした。終わってから展示を見ようと目論んでいたのに、対談が伸びて閉館時間まで小一時間に!これでは絶対に時間が足りないと出直すことになったのである。というわけで本日改めて出かけた次第。岡崎も徒歩圏内なので出来る技。

日曜日の対談の中でご当代が「長次郎は別格」とおっしゃっていたけれど、まさに。「フォルムも完璧」ともおっしゃっていた。こちらもまさに!どこからどう見てもこの形この寸法しかないのではと思わせる。パーフェクトなフォルムが生む静かな緊張感。そして「小さな部分に全体が宿り、全体に部分がある」茶盌。対談の中でのご当代の言葉をふと思い出しながらの鑑賞。翻ってご自分の作品については「バランスとインバランスのせめぎ合い」「パーフェクトが壊れていることが大事」というようなことをおっしゃっていた。確かに風が吹いたら倒れてしまいそうな緊張感のある茶入れなどは、まさにその姿勢の代表格か。ぎりぎりのせめぎ合いが生む動きのある緊張感。

普段あまり見ることがない楽家の家祖、田中宗慶の作品をはじめ、初代長次郎の作品もこんなに!と驚くほどの数で、まことに見応えあり。家祖、そして初代から次期16代まで、時系列に見ることによって自分ながらの発見もたくさんあった。表千家不審庵蔵の《千利休像》(春屋宗園賛、長谷川等伯筆)を間近に見ることができたのもとてもよかった。

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