宝の持ち腐れ (2017.04.21 Fri.)

茶の湯稽古を済ませ遅いお昼をDEAN & DELUCAのイートインで。ご先客の英語圏からのグループ。目があったので会釈をする。同時に向こうからも素敵な笑顔。大きなテーブルを挟む格好で席に着く。リタイアされて悠々自適風のご夫婦二組にもうお一人男性のグループ。自然と会話が耳に入ってくる。ときおり内容にくすっと(笑)それが目の端に入るのか真向かいのご夫婦も時々私の方を向いて微笑まれる。私より一回り近く上だろうか。お二人共とても素敵。年を取ってこその魅力というか。こういう雰囲気は日本人にはなかなか醸し出せない。どうしてだろうと密かに観察する(笑)まず姿勢がいい。英語特有の口を大きく使って発音する言語のせいか、口元が、シワがあってもきれい。表情も豊かなのでそれは顔全体に言える。そして何よりもコミュニケーション能力に長けている。このことは私が北米(カナダとアメリカの西海岸)でホームステイした10代の終わりにも痛切に感じたことだ。公共の場で知らない者同士が気持ち良く時間と空間をシェアできるようにマナーを身につけている人が多い。目があったら知らない人同士でも微笑み合う。列車やバス、お店で隣に座るときは一言かける。これは席を立つ時も同じ。ひと昔前の日本人もこうだったはずなのに最近はどこへ行ってもどんな場所でも素知らぬ顔の人が多い。

英語などの語学を習得してもコミュニケーション能力を身につけなければちっとも役には立たないのに、などとつらつらと思いながら帰りのバス、最後方のイスに腰掛けていたら途中で年配のご夫婦が隣に。先客の私に声をかけてくださり席に着く。降車場所が近づいたのか、途中前方の席が空くとまず女性が移動。少しおぼつかない男性がゆっくりと後に続く。女性の隣は外国からの観光客。男性に席を譲ろうと声をかけた。すると女性がやさしくその方の腕に手を置いて「すぐ降りるので大丈夫です。どうもありがとう」と日本語で。表情で内容を理解した外国の方。女性は降りるときにもう一度「どうもありがとう」と声をかける。外国の方も母国語でそれに答える。

このやり取りを後方の席から見ていてまさに我が意を得たり!と心の中で膝を打つ。どんなに言葉を学んだところで人を慮る心を持っていなければ何にもならない。人との付き合い方を学ばなければまさに「宝の持ち腐れ」なのだ。両方を兼ね備えた大きな人、このモミジのような、を目指そう。

Photo by iPhone 6s