“あい”ある世界へ (2017.02.21 Tue. p.m.)

午後はこの旅のクライマックス、森くみ子さんの工房をお訪ねする。知り合って随分になるけれど、初めての訪問。「いつかいつか」の思いがついに実現した。森さんの藍は、どの色も本当にきれい。その美しい藍が染められている「現場」を、一度拝見したかった。工房に一歩踏み込むと発酵した藍の匂い。心躍る。

江戸時代から続く木灰汁発酵建て。一般に藍を建てることは非常に難しいと言われますが、森さん曰く、藍を建てることはそれほど大変ではない、とのこと。確かに昔から続く技術で、あっちにもこっちにも紺屋さんがあったのだから、そのことを考えると大いに頷けるお話である。あまりに難しかったら続かないし、それ程広がらなかったにちがいない。だからと言って、藍を建てて布を染める、ということが「簡単」なことである、ということにはならない。手間のかかる仕事で、経験と確かな目と腕、そして忍耐も必要だ。それにしても「発酵」って何て素晴らしいんだ!(大好きなワインも発酵、毎日食べる納豆も発酵)科学的なのにマジックのような「藍染」ってなんてすてきなんだ!!この素晴らしい伝統技術が、きちんとした「生業」として続いて行くことを目標に、あれこれと思いを巡らせてきちんと数字をはじき出し、一歩一歩実行に移している森さんも本当にすばらしい。

美味しい珈琲をいただきながらお喋りをしていたらあっという間に帰りのバスの時間が近づく。最後にもう一度、藍甕(と言っても森さんちのは四角い)を見せていただき、森さんが建てた年度が違うそれぞれの藍でハンカチを染めてくれた。手早く水で洗い、工房見学記念にと持たせてくれた。(その三枚は「森重(もりかさね)」と名前をつけられ、我が家のリビングに鎮座している。)

森さんの工房は、藍、そして愛に溢れた場所だった。お庭のみごとな桜の樹が花開く頃、またお訪ねしたいものである。