イタリアを想う(2020.03.06 Fri.)

Marsala 2014年9月27日撮影

イタリアの地を初めて踏んだのは1991年秋。三週間旅をした。何か特別な思いがあっての旅ではなかった。その年の春、目指していたのはスペイン。長く憧れの地であった。しかし湾岸戦争が勃発。いったんスペインを諦める。騒ぎが収まった秋、さてどうしようと思案した。旅は計画の段階から始まっている。同じことの繰り返しはつまらないと思いつつ地図を眺めていた。ふとイタリアに目が留まる。そうだ、イタリアへ行ってみよう。するとたちまち恋に落ち… 今まで何とも思っていなかった人が突然ときめきの対象になるような、そんな体験だった。それから数回の例外を除いて、毎年旅をする「特別な」場所になった。バールの賑わい、黄昏時のパッセジャータ、駅や公園に集まるおじいさんたち。イタリアの光景がふとまぶたに浮かぶとたちまち飛んで行きたくなる。まったく、と腹を立てることもあるけれど、すぐにそんなことを忘れさせてくれるチャーミングな人たち。困ったところもひっくるめて好きなのだから、これは本物の愛である(笑)

そのイタリアも今、たいへんなことになっている。あれよあれよと言う間に新型コロナウイルスに感染する人が増え、3月5日から15日まで国内すべての小学校から大学までが休校。4月3日までサッカーなどのスポーツは無観客試合、手洗いや咳エチケット、人と話すときは1メートルの間隔を取る、それに加え政府は「挨拶するときの握手や抱擁を避けること」を国民に求めている。この一歩踏み込んだ要請には様々な意見も出ているようですが、確かに抱擁(Abbraccio)しつつ両頬に軽くキス(Bacio)というか頬を合わせる、をしあう習慣は、この時期大きなリスクがあると判断されても決して大袈裟ではないように思われる。この挨拶の仕方はイタリアだけではないので、同様の挨拶が習慣となっている他の国ではどう受け止められているでしょうか。ただ購読しているメルマガ「JITRAメールマガジン【イタリアへ行こう】Vol.876 」のコラムによるとその挨拶の仕方が、よく知っている間柄だけでなく“友人と出かけていてたまたま行きあった友人の友人(初めてあった人)と”や“何かの集いに出かけて行ってそこに居合わせた人全員と”というように繰り広げられるそうです。確かにホームステイ先の北米では親しい間柄で行われる挨拶で、ここまでではなかったと記憶している。

ともかく話すことが大好きで人との交流を大事にするイタリアの人たちにとって、これらの政府の要請は厳しいものに違いない。一日も早くバールに公園に駅に、再び賑やかな声が響きますように!パスクワ(今年は4月12日)の頃には光明が見えていますように!!